2014年11月12日水曜日

《台詞の練習》についての簡単なステートメント。


RT ブログ更新。昨夜のツイートまとめですが、冒頭に少しコメントを足しました。「複々線」展に関するツイートまとめ - paint/note (id:eyck / )


永瀬さんが「複々線」展(現代ハイツ)に関しての感想をツイートしていただきました。丁寧に観ていただいているので出品作家としてとても嬉しいです。さらに僕の作品を「はっきりと政治的」といってくれたことも、内容をしっかりと聞いてくれたことがわかるものでした。


ここで宣伝もかねて(笑)、少し自分の作品の説明させていただきたいと思います。《台詞の練習》は、ブレヒトの「ソポクレスのアンティーゴネ」を脚本とし、ベビー・ピー などで活躍している女優の松田早穂さんに、アンティーゴネ役の台詞の練習をしてもらいました。


通常の役者が行なう練習法とは異なり、トンネルのなかを歩いて往復しながら台詞を読んでいくプロセスになっています。このアイデアの下には、一つにジャン=バティスト・グルーズの《A Boy with a Lesson-book》があります。

《A Boy with a Lesson-book》(1957)


Lesson bookというタイトルから少年が勉強していることがわかります。少年は、内容を頭に入れるため、本に書かれている文章を両手でしっかりと隠し、目は本から逸らせ自らの頭の 中で本の内容を反芻している状態です。ここで手は文章を隠すとともに、本の内容にから離れないように掴まろうとしています。


手はテキストを不在のものにしつつ、それに触れようとしている。不在のものに触れるというテーマは、グルーズという作家のなかで一貫したテーマとなっています。本作では、教育、信仰、自立の問題に対するグルーズの考えがみえます。


僕は今回このような学習の過程を作品化しようと試みました。つまり、アンティーゴネの台詞だけを抜き取ったのは、対話を問題にしているのではなく、アンティーゴネ/ブレヒトの台詞/思想を身体に入れていく過程を映像化しようと思いました。

《台詞の練習》(2014)

完成された演技ではなく、身体に入れるというを視覚的に音声的記録する。その所作をはっきりと見たいという欲望が強く、大量に撮影した写真を動画にするプロセスにしています。

一連のツイートは、永瀬さんの感想への応答にもなっていますが、こういう話をすることができて本当に貴重なきっかけをいただけました。ありがとうございました。

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複々線が昨日で終了しました。今回出品した《台詞の練習》は、マイブリッチなどに代表される連続写真の時間性や運動の記述と、リュミエールが創出したシネ マトグラフのような初期の映画の領域を考え直すものになりました。そして《台詞の練習》がサイレント作品ではないことで新たな発見もありました

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映画は一秒間に24コマなどの均質なリズムで流れるのに対して《台詞の練習》ではコマのリズムを不均質にしました。そのリズムを細かく調整していくなかで、連続写真による映像と、スローモーション映像の決定的な違いについての発見もありました。  

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また台詞を「暗記する」ことは、(以前ツイートしたように)本の物理的な存在と、物理的なものを切り離し身体のなか(記憶になか)に本を存在させる過程です。このことは、僕が初めて映画と写真の関係に取り組んだ写真作品《Silence》(2002)を思い出しました。

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《Silence》は、映画を観ている人ではなく、映画を観終わった直後の人を撮った写真作品シリーズです。被写体であるモデルの人の眼差しの先にはす でに映画は存在していませんが、まだ感情的には作品から抜け切れていない(夢を引きずった)状態を写真に定着させることの試みでした。

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 鑑賞中から撮影まで(撮影者である自分も含めて)モデルは一言も喋らないで撮影を行いました。《Silence (ママと娼婦)#2》などでは、一枚のなかで複数のモデル(鑑賞者)を撮ることが僕のなかで重要なものとなりました。

《Silence (ママと娼婦)#2》



2014年11月8日土曜日

複々線のトークイベントに参加しました。

複々線トークイベント
現代HEIGHTS Gallery Den
11月8日[土]19:00〜

こちらのトークイベントに参加しました。