2017年8月21日月曜日

蜘蛛と箒企画特別講座を開催いたします。



蜘蛛と箒企画特別講座:
石岡良治「ゴンブリッチ再訪:カリカチュア論からその現代的意義を考察する」

エルンスト・ゴンブリッチ(1909-2001)のイメージ理論を、カリカチュア研究における精神分析美学との関連に注目しつつ、その現代的意義について考察するレクチャー。


開催日時:2017年9月17日(日)19:00-21:00
開場時間:18:30–
開催場所:武蔵野プレイス・スペースC
(武蔵野市境南町2-3-18 武蔵境駅から徒歩1分程度)
料金:1,500円
定員:35名 

※事前予約制 お名前、人数、ご連絡先のメールアドレスまたはお電話番号をご明記の上、aslspbank@gmail.comまでご連絡ください。
定員に達したため募集は締め切らせていただきます。







(左)オノレ・ドーミエ 《洋梨》(1831)、(右)ジョン・コンスタブル《ウィヴンホー・パーク、エセックス》(1816)



 ゴンブリッチは、20世紀のベストセラー美術書『美術の物語』(初版1950)の著者として知られるのみならず、主著『芸術と幻影』(1960)など、認知科学の進展をふまえた理論的著作でも有名な美術史家である。オーストリア系ユダヤ人として生まれ、ウィーン大学で美術史を学ぶも、ナチス台頭から「アンシュルス」(1938年のドイツによるオーストリア併合)に至るユダヤ人迫害に伴い1936年にイギリスに亡命。ウォーバーグ研究所(アビ・ヴァールブルクの蔵書を基礎に1921年ハンブルクで設立されたが、ユダヤ人迫害から避難すべく1933年ロンドンに移転)に職を得て後年所長もつとめた。

 ゴンブリッチのイメージ理論は、J・J・ギブソンやR・グレゴリー、U・ナイサーなどの視知覚をめぐる認知科学との交流によって形成され、今なお認知科学ないしは脳科学から美術作品を考察する際には不可欠の参照源となっている。またゴンブリッチは自身の理論を明示的にカール・ポパーの反証主義と関連付けており、ポパー同様「ヘーゲルやマルクスなどの歴史主義批判」「反証可能性を有さない精神分析への疑義」「方法論的個人主義に基づく社会的な審級への不信」をたびたび示していた。

 ゴンブリッチ理論のこうした側面は、ときに「還元主義」として賛否両面から受容された。主な批判としては、20世紀終盤に英語圏における批評理論との関連で興隆した「ニューアートヒストリー」の観点から、事物の自然主義的再現を特権視しているとみなされたことが挙げられる(ノーマン・ブライソンによる批判)。またアビ・ヴァールブルクの評伝において、「イメージの両義性」をめぐる理論的錯綜を単純化することでヴァールブルクの射程を取り逃すなど、クリアカットな議論の明晰性が、一定の犠牲の上に成り立っているのではないかという疑念が示されるのは、そうした状況の現れと言えるだろう。

 けれども同時に指摘されなければならないのは、精神分析を疑似科学と断じたポパーとは異なり、ゴンブリッチはその著作活動を通じて、エルンスト・クリス(1900-57)の精神分析美学を参照し続けていた事実である。ウィーン大学で美術史を学び、かつフロイトの精神分析運動にも参与していたエルンスト・クリスは、アメリカに亡命後は自我心理学を展開したが、ウィーン大学における研究が危機に瀕していた時期、カリカチュアについてゴンブリッチとの共著を執筆していた。共著は最終的に草稿にとどまったが、ここから二人はそれぞれ複数の論文を書き、『芸術の精神分析的研究』(クリス)や『棒馬考』(ゴンブリッチ)に収められている。

 カリカチュアをめぐる考察は、上述したゴンブリッチ理論についての大まかな描像を捉え直す上で重要であるのみならず、「精神分析から脳科学へ」と言い表されることもある研究動向の変遷を、別の仕方で捉え直すことを可能にする。カリカチュア論は、ゴンブリッチの多面的な活動をつなぎとめる「蝶番」の役割を果たしており、芸術とポピュラーカルチャーの関係、そして芸術が歴史をもつ理由と観者の役割など、理論と歴史の双方において決定的な重要性をもっている。また、カリカチュアに即して提起された、イメージの脱魔術化や素描的「表現」をめぐる洞察は、近年のイメージ人類学や神経系人文学をめぐる動向との関係において、ゴンブリッチの現代的意義を考察する上でもきわめて重要であるように思われる。



参考資料:
1)「The Gombrich Archive」( https://gombrich.co.uk

2)クリストファー・ウッドの『芸術と幻影』評(https://webspace.yale.edu/wood/documents/gombrichburlington.pdf …

3)筑摩書房 PR誌ちくま、石岡良治のコラム「イメージ論を経巡る」(全三回)
「イメージ論を経巡る・1 フータモと機械のトポス」(http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/1136/

「イメージ論を経巡る・2 ルイス・ウェインのネコと対象の残存」(http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/1157/

「イメージ論を経巡る・3 イメージ論の「折衝」と平滑空間」(http://www.chikumashobo.co.jp/blog/pr_chikuma/entry/1180/



プロフィール:
石岡良治(いしおかよしはる)1972年生まれ、批評家、表象文化論。著書に『視覚文化「超」講義』(2014)『「超」批評 視覚文化×マンガ』(2015)。





————————

2017年8月17日木曜日

執筆者で参加する引込線2017の展示が始まります。

8月26日から、所沢で開催される引込線2017の展覧会が始まります。
2017年8月26日(土)― 9月24日(日)
10:00 ―17:00
休場日:火曜・水曜
会場:旧所沢市立第2学校給食センター(埼玉県所沢市中富1862-1)
ホームページ:http://hikikomisen.com/

なお現在引込線にボランティアで活躍していただける方を募集しています。

「引込線2017」では、ボランティアの方を募集しております!興味のある方は是非よろしくお願いいたします。
ボランティア特典:書籍「引込線2017」を一冊進呈!※全日1回/半日2回です。丸1日ボランティア参加された方には交通費として1,000円支給。半日間のボランティア参加の方には交通費500円支給。

【ボランティア募集のお知らせ】
展覧会「引込線 2017」会場にて、受付・監視等のお手伝いをしてくださる方を募集します。お申し込みは下記、事務局宛に、氏名、年齢、活動希望日を書いてEメールをお送りください。
info@hikikomisen.com

ボランティア概要
期間:2017年8月26日(土)―9月24日(日)
半日からお手伝い頂けます。火・水曜は休場です。

場所:旧所沢市立第2学校給食センター (埼玉県所沢市中富1862-1)

おもな活動内容:
・開場、閉場のお手伝い
・作品と会場の監視業務
・展示作品のかんたんなご案内

活動時間:
・一日の場合 09:50―17:10(休憩、昼休みあり)
・半日の場合 09:50―13:00/13:00―17:10

募集条件:
・平成29年8月26日現在で満18歳以上の方
・ボランティア活動を行うにあたり、引込線2017実行委員会の連絡事項やマニュアル等を遵守できること。

待遇 :
・活動については、原則無償です。
・丸1日ボランティア参加された方には交通費として1,000円支給。半日間のボランティア参加の方には交通費500円支給。(当日支給)
・ボランティア活動に1日間以上参加した方には、展覧会後に発行される書籍「引込線 2017」を一冊差し上げます。(半日×2回も一日扱いとなります)
・ボランティア活動参加者に感謝の意を表し、書籍「引込線 2017」と引込線2017公式ホームページに一人一人のお名前を掲載します。
※半日からボランティア活動に参加頂けますが、書籍「引込線 2017」の進呈は合計1日間以上お手伝い頂いた方が対象となります。ご注意下さい。
詳しくはホームページでご確認ください。

2017年8月15日火曜日

美術手帖にレビューを寄稿しました。

‪美術手帖9月号に、森美術館の企画「MAMスクリーン」で上映されているカミーユ・アンロについてのレビュー「軽やかにかわして結び直す|MAMスクリーン006:カミーユ・アンロ」を書きました。
アンロは2013年のヴェネチア・ビエンナーレで銀獅子賞を受賞した作家です。‬