2013年2月3日日曜日

グループ展に参加しています。

 
渡辺泰子企画 グループ展「地上より」
Group Exhibition Curated by Yasuko Watanabe “From the Ground”
2013年1月19日(土)~2月23日(土)
11:00 ~ 19:00 日・月・祝祭日休廊
GALLERY SIDE 2
この度、GALLERY SIDE 2では、今週末1月19日(土)から渡辺泰子企画グループ展「地上より」を開催致します。
また、2月2日(土)には、日本では数少ないSETI※研究者の1人である兵庫県立大西はりま天文台 天文科学専門員の鳴沢真也氏をお招きし、特別トークショーを開催致します。
ご来場を心よりお待ち申し上げます。


展覧会に寄せて

文:渡辺泰子

私たちは大切にできるものがそんなに多くないことも知っているけれど、
だからといって慎ましくいるわけではない。
目玉を動かし、身体いっぱいに手を伸ばし、野蛮な気持ちに心を動かす。

超音速で回転しながら、およそ秒速28kmで移動し続ける乗り物の表面。
足下は安定しない。
この地上より始まったことを偶然とするか運命とするか。
なにより世界が摩訶不思議であることを感じるから、その感触をもっと得たいと思い、輪郭を浮かびあがらせようとする。
ここで行われるたくらみ、愛すべき創造の営みを紹介しよう。

池崎拓也氏は海を陸を悠々と飛び越え、風景を両手いっぱいに懐に抱き寄せる。
引き寄せたそれを身の回りのものに変化(へんげ)させていく眼差しのスケールは伸びやかで、アジアを体感しようと試み続けてきたからだろう独自の伸縮性を持っている。
彼の見ようとしている世界がなにげない物質にすり替わる瞬間に、現実とフィクションの境界線は揺さぶられる。
そこにしかない場所/作品、それでしかありえない風景/作品をつくる視点が作品に浮遊感をもたらし、世界を温かくふくよかなものにしてくれる。

石川卓磨氏の視線は、ときにユーモラスに、ときに暴力性をもって表わされる。
それは対象に深い愛着を感じている眼差しでありながら、同時に人間の解釈/誤読がたどり着く滑稽さをあばこうとするものでもある。
更新され続けてきた世界への考察、可能性への飽くなき好奇心を糧に、カリカチュアの側面を持ちながらも時空を超えようとする作品群は、
地面を踏みしめる足のざらついた感触を再び思い起こさせてくれるのだ。

そして、今回特別トークにお呼びする鳴沢晋也氏。
鳴沢氏は、兵庫県西はりま天文台に勤める天文科学専門員として、日本におけるSETIの活動の第一人者として精力的に活動を続けてこられた。
SETIとは地球外知的生命体探査(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)の略であり、天文学の一分野である。
1960年にアメリカのFrank Drake(フランク ドレイク)氏が国立電波天文台で実施したのが最初で(オズマ計画)、その後もアメリカを中心に観測が続けられている。
主に電波望遠鏡で受信した電波を解析し、地球外知的生命から発せられたものがないかを探すという活動である。
鳴沢氏は2009年全国同時SETI「さざんか計画」、2010年オズマ計画50周年記念の世界同時SETI「ドロシー計画」のプロジェクトマネージャーを勤め、現在も来るべき日に備え、活動されている。
地球外生命の発見は時間の問題と言われている今、
その、広大な宇宙にむけて耳をすます活動の原動力となる想像力とはいかなるものなのか。
鳴沢さんは「なにを」準備しているのか?
私たちは孤独な存在なのか?
遠く兵庫県からお越し頂くこの貴重な機会を大変光栄に思う。

先に伝えておこう、私の考えはこうだ。
この地球上で起こっている出来事の不思議さを思えば、自分の想像を遥かに越えた出来事はまだまだ私たちを待っている。
知ることを待つ。知るために準備する。そして、たぶんほとんど知らずに死ぬ。
それでもそう、私たちだけだなんて、スペースがもったいない。

最後に、この展覧会から受信されたものが、さらにこの世界を魅力的なものにしてくれることを願う。

ーーイカットは足を止めて、祝杯をあげる真似をした。
「来るべきすべての世代の人々が、自分では完成させることのできないなにかを、はじめられますように」
グレッグ・イーガン『プランク・ダイブ』所収「伝播」 山岸真訳(早川文庫SF)